電車の中で突然、心臓が激しく打ち、息が吸えないように感じる。手が震え、「このまま死ぬのでは」と怖くなる。しばらくすると治まるものの、また起きるのが不安で外出を避けてしまう——こうした発作は、パニック発作でみられます。
ただし、胸痛や息苦しさは心臓・肺などの病気でも起こります。初めての強い発作を自己判断で「パニック」と決めず、救急サインを確認し、必要な身体診察を受けることが大切です。
この記事で分かること
- パニック発作で起こる心と体の反応
- 発作中に安全を確保する方法
- 救急受診と通常受診の目安
- 心療内科・精神科・カウンセリングの役割
パニック発作とは
厚生労働省は、突然理由もなく激しい不安に襲われ、動悸、めまい、息苦しさなどが生じる状態をパニック発作と説明しています。症状は急に強まり、死ぬのではないか、自分を制御できないのではないかという恐怖を伴うことがあります。
一度の発作だけでパニック障害と決まるわけではありません。発作を繰り返し、「また起きたらどうしよう」という予期不安が続き、電車や人混み、外出を避けるなど生活に影響する場合に、パニック障害が検討されます。
パニック発作でみられる症状
- 動悸、脈が速くなる
- 息切れ、窒息するような感覚
- 胸の痛み・圧迫感
- 発汗、震え、寒気や熱感
- 吐き気、腹部の不快感
- めまい、気が遠くなる感覚
- 現実ではない感じ、自分が自分でない感じ
- 死への恐怖、制御を失う恐怖
発作が起きたときにすること
1. 事故を防ぐ
運転中なら安全な場所へ停車します。駅のホームや階段では端から離れ、座れる場所へ移動します。転倒しそうなら無理に歩かず、周囲の人や駅員へ助けを求めましょう。
2. 呼吸を「深く」しすぎない
息苦しいと大きく吸い込みたくなりますが、速く深い呼吸を続けると、手足のしびれやめまいが強まることがあります。肩の力を抜き、吸うことより、口をすぼめてゆっくり長く吐くことを意識します。紙袋を口へ当てる方法は、酸素不足を招くおそれがあるため行わないでください。
3. 今いる場所を確認する
足裏が床に触れる感覚、見える物の色、聞こえる音を順に確かめます。「発作はつらいが、今は安全な場所にいる」と短い言葉で確認します。無理に気持ちを消そうとせず、波が下がるのを待ちます。
救急要請を考えるサイン
次の症状がある場合は、パニック発作と決めつけず119番へ相談してください。
- 初めての強い胸痛・圧迫感
- 意識を失った、反応が鈍い
- 安静でも呼吸困難が続く、唇が紫色になる
- 片側のまひ、ろれつが回らない
- 大量出血、強いアレルギー症状を伴う
- 自傷や自殺を実行しそうな切迫した状態
持病がある、妊娠中、薬を新しく始めた直後の発作も、早めに医療機関へ相談してください。
発作後に記録しておく
発作の開始・終了時刻、場所、直前の行動、睡眠、カフェインや飲酒、症状、脈拍、月経、服薬をメモします。何が怖かったか、どこを避けるようになったかも記録すると、診察で予期不安の程度を伝えやすくなります。
受診先と治療の考え方
初回の動悸・胸痛・息苦しさでは、まず内科や救急外来で身体の病気を確認することがあります。発作を繰り返す、予期不安で行動が制限される場合は、心療内科や精神科へ相談します。
治療では、状態に応じて薬物療法や認知行動療法などが検討されます。薬は自己判断で中止・増減しないでください。
カウンセリングが役立つ場面
発作への恐怖を整理したい、避けている場所へ段階的に戻る方法を考えたい、ストレスとの関係を言葉にしたいときは心理カウンセリングが選択肢になります。心理カウンセリングで相談できる内容を確認しておくと、初回に何を話すか整理できます。
外出が難しい場合は、Kimochiを利用する前に確認したいポイントも参考になります。ただし、診断や薬の処方は医療機関の役割です。緊急症状や自傷・自殺の考えがある場合、オンライン相談だけで終わらせないでください。
日常生活でできる再発への備え
- 睡眠不足と過量のカフェインを避ける
- 発作時に連絡する人・場所を決めておく
- 症状カードに「起こりやすい症状」「連絡先」を書く
- 避けている行動を一人で一気に克服しようとしない
- アルコールや市販薬で不安を抑え続けない
発作を恐れて家に閉じこもる状態が続くと、生活範囲がさらに狭まります。医師や心理職と、小さな段階に分けて取り組みましょう。
避けている場所へ戻るときの注意
「慣れれば治る」と一人で混雑した電車に長時間乗るなど、急な挑戦は勧められません。医師や心理職と、駅まで行く、空いている時間に一駅乗る、同行者と乗るなど段階を決めます。途中で降りられる場所や連絡先も用意し、できた範囲を記録します。
発作が出なかったことだけを成功にせず、「不安があっても安全に戻れた」「助けを求められた」ことも進歩として扱います。治療は苦しさを我慢する訓練ではありません。
職場・家族へ共有する短いメモ
発作時にしてほしいことを、1枚にまとめておくと安心です。安全な場所へ誘導する、静かに付き添う、胸痛や意識障害があれば救急へ連絡する、服薬は本人の指示どおりにする、といった内容です。病名を広く公開する必要はなく、信頼できる人に必要な範囲だけ共有します。
こんなときは医師に相談
- 発作を繰り返す
- 電車、買い物、出勤を避けるようになった
- 「また起きる」不安で眠れない
- 動悸や息苦しさの身体評価を受けていない
- 気分の落ち込み、自傷・自殺の考えがある
自傷・自殺を考えているときは、一人にならず、身近な人、医療機関、地域の公的相談窓口へ連絡してください。厚生労働省「まもろうよ こころ」では電話・SNS相談を案内しています。差し迫った危険がある場合は119番・110番を利用します。
よくある質問
発作で本当に死ぬことはありますか?
パニック発作そのものは非常につらい一方、身体の緊急疾患と症状が似ています。初めての強い症状や胸痛・失神があるときは医療評価を受けてください。
カウンセリングだけで治りますか?
状態により薬物療法や認知行動療法などを組み合わせます。診断と治療方針は医師と相談し、カウンセリングだけで治ると決めつけないでください。
周囲の人はどう声をかければよいですか?
「落ち着いて」と繰り返すより、安全な場所へ移動し、「ここにいる」「必要なら救急へ連絡する」と短く伝えます。本人の許可なく大勢で囲まないようにします。
まとめ
パニック発作では、まず事故を防ぎ、ゆっくり吐く呼吸と現在の感覚へ意識を戻します。ただし、初めての胸痛・呼吸困難・失神は身体の病気を除外する必要があります。発作や回避が続くなら、心療内科・精神科と心理相談を適切に使い分けましょう。
本記事は一般的な情報であり、診断や治療の代わりではありません。
参考情報
- 厚生労働省「不安障害」
- 厚生労働省「不安でたまらない」
- 厚生労働省「困った時の相談方法・窓口」
- こころの情報サイト「相談しあう・支えあう」

